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本書はひと言でいえば、企業経営における人材育成実務教本である。
企業内 「人材育成」――この言葉を聞いて、ピンと来るひとびとも
世の中にはいるのだろうが、わたしの経験上では、このような言葉
とも、また、このような発想とも無縁な環境にいたため、「企業の
人材育成担当者に向けて書かれた」 本書の内容は新鮮であった。
本書の構成は次のとおりである: @人材育成の目的 A育成
ターゲットの選定 B育成のタイミング C育成プログラムの設計
思想 D人材育成の責任 E教育効果測定の方法 F著者が直接
参画するフリービット株式会社で導入している人材育成プログラム
の具体例――これらのことがコンパクトにまとめられている。
このようなアウトラインはともかく、実際にこういうプログラムに
ついて考察し、実践し、そして継続している企業などとんでもなく
希少に見える。というか、こういう企業が現実にあるのが驚きだ。
だからこそ、フリービット的な企業の取り組みがきわめて先進的
かつひじょうに 『Wonder』 (@immi) に思われるのだけれども。
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というのも、本書で開陳されている人材育成プログロムを企業内で
具体的に着手すると想定されている部署はといえば、人事部だ。
単にわたしが無知なだけかもしれないが、寡聞にして、人材育成、
あるいは人材開発に積極的にリソースを注入している人事部の存在
など (外資系ならともかく) 噂レベルでしか聞いたことがない。
未上場/上場を問わず大半の企業にとって、人事部の役割とは――
本書の 「あとがき」 にもあるように――「全社の統治に責任を
持つ 『制度の番人』」 として機能している。その具体的な業務の
中身といえば、採用管理・人事管理・給与管理・労務管理・社会
保険管理などといった企業内人的システムの整備・管理が中心だ。
人事部が持つこれらの機能はいうまでもなく不可欠ではある。が、
「ビジネス・ゲーム」 的にはあくまで 「スタッフ」、すなわち
「直接売上げに関係ない」 部門のひとつが人事部であり、そして
そのなかでも、この部門は 「シェアード・サービス (複数の組織で
共通で実施しうる業務を、別会社として独立させることで業務の
専門化とコスト低減を狙う制度) の最右翼として数えられている」、
いわば高度に機能化されたルーティン業務をただ単にこなすだけの
「取り替え可能」 な部門として扱われているのが現状である。
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このような下手をすれば "All Things Ordinary" (@Anniversary)
を繰り返すだけの退屈な部門の筆頭核である人事部に酒井氏が
スポットライトを当てるには理由がある。全社的な 「戦略の立案」
――これを経営企画室がたとえエレガントに実施したとしても、
肝心要の 「戦略の実行」――これが大半の企業においてうまく
いっていないのが現状だからだ (実際、こういうことはあまりにも
常態化されすぎていて、ほとんどの社員はそれが当たり前とすら思って
いるのが現状ではなかろうか)。そこで人事部の出番というわけだ。
なぜなら、「現実に 『戦略の実行』 を妨げるのは、利害の異なる
人材の間で起こる 『コンフリクト』 と、戦略からブレークダウン
されたアクションが人材の能力を超えてしまっていることから生じる
『行き詰まり』 であり、これらは紛れもなく 『ヒトの問題』
だから」 (p.203) だ。そう。あくまで 「ヒトの問題」 なのだ。
新しい人事部は、この 「ヒトの問題」 を解消するためのスキルや
コンピテンシーを磨き上げることが求められていると、酒井氏はいう:
「経営の専門用語を使って激論を交わす社長と営業担当役員
の間に堂々と割って入ることのできるような新しい人事部に
求められるのは、高度な人材育成のスキルをベースとした
イノベーションのリーダーシップです。」 (p.204)
はっきりいってこれはかなり要求値が高い。いや。高すぎるといえる。
というのも、従来の人事部にこれほどのことが成し遂げられるとは、
到底、思えないからだ (試しに自分が勤めている会社の人事部を
改めてご覧になっていただくとよい)。このような理想的な新しい
人事部のヴィジョンと、その忠実な実践を、おそらく大半の企業の
人事部はクリアできず、結果、「ミッション・インポシブル」 に
終わるであろう、とさえ思ってしまうのは下衆の勘ぐりだろうか。
ところが、それでもなお、「戦略の立案」 に基づいた 「戦略の実行」
を見事に実践しうる新しい人事部の創造はけっして不可能ではない。
そのことを酒井氏は本書において自身が牽引するフリービットでの
取り組みをサンプルとして用いつつ、明確に、丁寧に示してくれる。
そして本書を読むことで、「ヒトこそが企業経営に残された最後の
開発ターゲット」 であることがつよく実感されることになるであろう。
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独自解釈を許せるか否か
期待が強過ぎたのかもしれません

